熊谷溢夫



熊谷溢夫(くまがい いつお)1936年金沢生まれ。

石垣島在住20年の画家さんです。
八重山の生物を点描で生き生きと描き出す。
A3の白い紙に描かれた魚やマンタの泳ぐ姿は、熊谷さんが直に見た景色だ。
氏の大きなまなざしはマクロにも超広角にも対応する。
線に見えたマンタのしなやかなヒレも、魚の鋭い背びれも目を近づけると点で描かれていることがわかる。
ちかごろ近くの物がいちじるしく見えにくい当方にとって、機械を使わずに“絵”を記憶に焼き込む画家の能力に驚嘆することしかできない。
氏は切り絵もなさっていて、こちらは点描の写実的な感じとは対照的に素朴で温かい。
黒い紙を切りとることで表現する“切り絵”には、版画や写真にはあるグレーという中間色が無い。
紙を切り抜いてしまう“切り絵”は版画と違い、黒と白の線は紙がどこかで繋がっていないと絵として成立しない。
八重山に伝わる民話を題材にした“切り絵”を何点か見せてもらった。
「お天気を偵察するフクルベー」は十四枚で一つのストーリーになっている。
フクルベーとは八重山でカワハギのこと。
冬の寒い時期,春を待つ海底の魚たちが会議を開く。
海上では温かい太陽が出ていないか、誰か偵察して来てほしい、白羽の矢が立つのは決まってフクルベーだ。
皮が厚いから寒い海上まで出て行っても、きっと帰って来ることが出来ると。
北風が吹いた翌日八重山のビーチには、戻れなかったフクルベーが打ち上げられている。
八重山の海にこんな物語がかくれていた、というおはなし。
黒と白の切り絵で描かれた八重山の海の話は、思い返すと頭の中で鮮やかな色彩を放っていた。
僕はふだん熊谷先生と呼んでいるのだけれど、氏は “先生”はやめてほしいと笑いながら頭を掻く。
先生は工房にしているペンション“赤瓦”で、漆喰シーサーの体験指導もしている。
午前中はBSでメジャーリーグを楽しみ、午後は竹富を臨む”ペンション赤瓦”でシーサー作り。
大木の木陰で漆喰をいじっている姿は、八重山の精霊“キジムナー”がそこにいるように写る。
“クマさん!ソバできましたよー”ペンションのスタッフがキッチンから叫ぶ。
“ほっほ、ほっー、出来ましたか”
少年のような目がソバが出来て、いっそう輝く。
やはりこの人はキジムナーかも。

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